カラフルでちょっと不思議な旗「タルチョ」。
チベットやネパールの風景でよく目にするものですが「見たことはあるけど、意味までは知らないかも」という人もいるのではないでしょうか。
実はこの旗、色のひとつひとつに意味があって、描かれた絵や文字にも、いろんな願いや祈りが込められているんです。
この記事では、その意味や背景をわかりやすく解説していきます!
そもそもタルチョって何?

タルチョとは、願いや祈りを風に乗せて届けるために掲げられる、チベット仏教の祈りの旗のことをいいます。
- タルは「風」
- チョは「旗」
という意味で、風が吹くたびに願いが空へと広がっていく――そんなふうに信じられています。
チベットやネパールなど、仏教文化が根づいている地域ではよく目にするものですが、カラフルな見た目の裏側には、実は深い意味や長い歴史が詰まっています。
ここからは、そんなタルチョの背景や込められた思いについて、くわしく見ていきましょう!
タルチョの歴史やルーツは?
タルチョのルーツには様々な言い伝えがありますが、チベット仏教よりも前の時代の「ボン教(ボンきょう)」の時代からあったとされています。
ボン教では自然の精霊や山の神を敬い、魔除けや加護を願って単色の平坦な旗を掲げたのが始まりとされています。
これがタルチョの原型とされていますが、このときはまだ現在のデザインではなく、シンプルな無地の旗が主に使用されました。
その後、チベットに仏教が広まると、仏教の教えと結びつきながら、旗のデザインや込められた意味合いも変化し、今のような五色の旗に経文や絵が描かれるかたちが定着していきます。
こうして現在のような五色の祈祷旗になったというわけなんです。
参考:Prayer flag – Wikipedia、History of Prayer Flags in Tibet|tibettravel.org、History of Tibetan Prayer Flags|thepeaceflagproject.org
タルチョの”カラフルな色”にせまる!
タルチョのカラフルな色は、見た目にもパッと目を引きますよね。
でも、ただおしゃれなデザインというわけではなく、使われている色は決まっていて、それぞれにちゃんと意味が込められているんです。
タルチョは色や順番は決められていた!

タルチョに使われている色は「青・白・赤・緑・黄」の5つと決まっています。
この配色は偶然ではなく、このように
- 青:空(そら)
- 白:風(かぜ)
- 赤:火(ひ)
- 緑:水(みず)
- 黄:地(つち)
それぞれがチベット仏教における「五大元素(ごだいげんそ)」を表しています。
また、5色の順番は決まっていて、基本的に
- 青:空
- 白:風
- 赤:火
- 緑:水
- 黄:地
といったような上から下に世界を構成しているイメージとなっています。
ぱっと見は色鮮やかでデザイン性が高く見えますが、実はこんなふうに、しっかりと意味が込められているんですね。
【最強!】タルチョに書かれた文字や絵の意味とは?

タルチョには、よく見ると絵や言葉が書かれていますが、どういった意味があるのでしょう?
詳しく見ていきましょう!
中央に描かれた「馬の絵」は何?

©Christopher J. Fynn / Wikimedia Commons
参考:Lungta symbol – Wind Horse – Wikipedia
タルチョの中央に描かれているのは「ルンタ」と呼ばれる馬の絵です。
チベット語で
- 「ルン」は風(気の流れ)
- 「タ」は馬
で「風の馬」という意味を指し、旗が風にはためくことで、この馬が天を駆け、仏教の教えを広めるとされています。
そして、馬の背中には「如意宝珠(にょいほうじゅ)」と呼ばれる宝の珠が描かれていて、これには願いを叶える力があるとも。
つまり、ルンタには
仏教の教えとともに風に乗って災いを祓い、すべてのものが平和で幸せに過ごせますように ――
そんな願いが込められて描かれているんです。
💡ちなみに……
タルチョのことを「ルンタ」と呼ぶ地域もあります。
これは、風の馬=”ルンタ”から来ています。
タルチョにはルンタが描かれることが多いため、旗そのものをそう呼ぶようになったというわけです。
もし「タルチョ」と言っても通じないときは、「ルンタ」と言い換えると通じるかも?!
ルンタ以外にも動物が!
よく見ると、ルンタを中心とした四隅に動物が描かれています。
この動物は四獣と呼ばれる聖なる守護獣たちで
- ガルーダ(神鳥)
- 龍
- 雪獅子(スノーライオン)
- 虎
が描かれています。
四獣もまた、災いを防ぎ、幸運や繁栄をもたらす存在とされています。
そのため、ルンタのまわりに四獣を描くことで、ルンタを守り、その力をより高めるという意味が込められているんです。
風にのって広がるのはルンタの祈りだけではなく、四獣がもたらす加護も一緒に届くと考えられています。
つまり、「ルンタと四獣」それぞれの役割が合わさることで、より強い祈りになるということなんです。
💡ほかにもこんなものが!
タルチョにはルンタや四獣の他にも、様々な絵柄があります。
例えば、チベット仏教で吉祥とされるシンボルである八吉祥文様(はちきっしょう)や

仏教の守護神や菩薩のシンボルが書かれることも。

こういったデザインの違いを眺めてみるだけでも、面白い発見がありますね。
タルチョに書かれている文字は何を表しているの?
タルチョには、絵のほかにも細かな文字がたくさん書かれていますが、これは主にチベット仏教の真言(マントラ)や祈りの言葉が書かれています。
中でもよく知られているのが、「オム・マニ・ペメ・フム」という観音菩薩のマントラ。
このマントラには
すべての生きとし生けるものが、平和で幸せに過ごせますように ――
という願いが込められています。
ほかにも、災いを遠ざけたり、健康や繁栄を願ったりと、さまざまな意味を持つ祈りの言葉が含まれていて、この真言が書かれたタルチョが風になびくことで、それを唱えたのと同じく徳が積めると考えられています。
つまりタルチョは!
- 願いを届けるルンタ
- 力と守りの四獣
- 祈りの言葉
この3つが一枚にそろった、まさに最強ともいえる旗!
見た目の美しさの裏には、力強い祈りがしっかりと込められた”特別な旗”というわけなんです。
【タルチョの飾り方】気をつけることやポイントとは?

ここまでタルチョを見てきて「なんだか縁起がよさそうで、素敵な旗だな」と感じた方もいるのではないでしょうか。
そうなると、自分の部屋や家にも飾ってみたくなりますよね。

でも、こういった祈りの旗って、気軽に飾ってもいいものなのかな……?
ちょっと気になるそのあたりについて、詳しく見ていきましょう!
そもそもタルチョは日本の家で飾ってもいいの?
タルチョは、日本の家で飾ってもまったく問題ありません。
もともとはチベットやネパールで、魔除けや祈りの意味を込めて屋根や山の上に掲げられていた旗ですが、最近では日本でもインテリアに取り入れている人が増えています。
通販サイトなどでも「おうち用」「インテリアにおすすめ」といった言葉と一緒に売られていることからもわかるように、特別な決まりがあるわけではありません。
ただ、もともとタルチョには祈りの意味が込められているので、せっかく飾るならその背景もちょっとだけ意識してみるといいかも。
例えば、風になびかせることで願いが天に届くとされているので、ベランダや窓際など風通しのいい場所に飾るのがおすすめ。
○15時「ナムギェルゴンパ」へ行くと本日も皆で読経中
— パレック/アジア旅行日記 (@mukashidairy) July 12, 2024
お茶やパンが配られパンを2ついただき1つもて余す
○16時半頃から今日もお菓子が配られる
再びあさましい光景
○今日は殆どがあげ菓子なので早々に立ち去る
○寺の売店で小タルチョ購入45Rs(113円)
※今はエアコンの前ではためいてます pic.twitter.com/ukrMbnB9A4
とはいえ、お部屋の中でも気持ちを込めて飾れば、それだけでも十分に意味があるので、気負わず飾ってみてくださいね。
タルチョを飾るときに気をつけたいこととは?
いざタルチョを飾ろうと思っても「どうやって飾ればいいのかな?」「マナーとかあるのかな?」と気になることもありますよね。
ここからはタルチョを飾る時に気をつけたいポイントを紹介します。
タルチョを床や低い場所に飾らない

タルチョは、床に置いたり足元に飾ったりしないようにしましょう。
というのも、タルチョにはお経や祈りの言葉が書かれているので、うっかり踏んでしまうような場所にあると、ちょっと失礼な扱いになってしまいます。
お部屋に飾るときは、棚の上や壁のちょっと高いところなど「見上げる位置」を意識すると◎。
タルチョは清潔で落ち着いた場所に飾ろう

タルチョは、トイレの近くやゴミ箱のそばなど、汚れやすい場所に飾るのは避けておきましょう。
祈りの意味がある旗なので、なるべく清潔で気持ちのいい空間に飾るのがベスト。
たとえば、リビングの窓辺や風通しのいいベランダのあたりに吊るしてみると、色とりどりのタルチョが目に入るたびに気分もパッと明るくなって、タルチョ本来の意味も相まってオススメです。
色の順番にも意味があるので意識して飾ろう

タルチョの5色にはそれぞれ意味が込められていて、並び方にも自然とのつながりや調和を表す大事な意味があります。
買った時にこの順番になっていることも多いですが、意味を知らないと「うっかり逆に飾っていた!」なんてことも。
そのため、ちゃんと「青・白・赤・緑・黄」の伝統的な並び順になっているか確認してから飾りましょう。
タルチョは”神聖な旗”ということを忘れずに

タルチョは、ただの飾りではなく、「自分だけじゃなく、すべての生きものが幸せでありますように」という祈りや平和の願いが込められた大切なものです。
見た目のかわいさやインテリア感覚でなんとなく飾るのではなく、その意味を知ったうえで扱うようにしましょう。
タルチョの意味を活かす飾り方とは?
気をつけたいポイントをおさえたところで、じゃあ実際にどう飾るのがいいの?と気になりますよね。
以下に飾り方をまとめました。
なかでも、新年や家族の節目など「ちょっと気持ちを切り替えたいな」というタイミングで新しいタルチョを飾るのはとてもおすすめ。
現地では年明けに掛け替える習慣があって、新たな願いを込めるにはぴったりのタイミングとされています。
タルチョを飾るときのヒントとして、参考にしてみてくださいね。
タルチョを飾るときに気になるあれこれ
タルチョの飾り方の他にも、いろいろ気になることが出てくることもありますよね。
ここでは
といった2つの疑問にお答えします!
古くなったタルチョはどうすればいいの?
古くなったタルチョは、「ありがとう」の気持ちを込めて丁寧に手放しましょう。
本場チベットでは、タルチョがボロボロになるまで風雨にさらされることが多く、それは「祈りがちゃんと風に乗って天に届いた証」と考えられています。
そのため役目を終えたタルチョをそのままにして自然に還すことが一般的です。
ただ、日本では自然の中に放置するのは難しいので、お守りなどと同じように扱うのがいいでしょう。
たとえば、お焚き上げやどんど焼きに出すのがオススメ。
出すときは必ずお寺や神社の方に事前に相談してから出すようにしましょう。
古くなったからといって”そのまま丸めてゴミ箱へ”ではなく「役目を終えた祈りの旗」として見送る気持ちで手放しましょう。
ネットで買ったものでも意味ある?
ネットで購入したタルチョでも、ちゃんと意味はありますし、ご利益も十分にあるとされています。
大切なのは「どこで買ったか」ではなく、「どう飾るか」と「どんな気持ちで向き合うか」です。
ネットショップで扱われているタルチョの中にも、現地で作られたものや、文化を大切にしたデザインのものがたくさんあります。
気になる場合は、お店の説明や商品の背景をしっかりチェックして、自分が納得できるものを選ぶと良いでしょう。
「ネットで買ったから意味がない」ということはありません。
むしろ、その旗に込められた想いや祈りを受けとって「自分なりに大切に飾る」ことが一番です。
今回はタルチョについて、旗の意味や歴史、色に込められた想いから、飾り方のポイントや注意点まで幅広くご紹介しました。
最初は「カラフルできれいな旗だな」と思っていた方も、読み進めるうちに「祈りが込められた神聖な旗なんだ」と、少し印象が変わったのではないでしょうか。
意味を知ったうえで飾ると、風が吹くたびに、なんとなく気持ちが落ち着くように感じるかもしれませんね。
ぜひ気持ちを込めて、自分らしい飾り方でタルチョを楽しんでみてくださいね。
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